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次世代の働き方とオフィスを考える_29 ビルへの追加投資は得か損か

次世代の働き方とオフィスを考える_29

ビルへの追加投資は得か損か

山手線南西エリアの駅前にあるビルのご相談をいただきました。

駅2分、大通り沿いで視認性も抜群。これまではケータイショップが入居してたことからも立地のよさがわかります。

ただ、かつてはオーナーの自社使用だったため、電気設備が複数テナント貸しの対応になってなかったり、上層階の自宅だった部分に法的には不要な階段があって間取り的に使い勝手が悪かったりで空室期間が長引いているという状況です。

オーナーさん曰くは「好きにテナントに改装してもらってOK。一棟貸しが条件。自分では投資したくない」ということです。

この「テナントに好きに改装してもらっていいから」という貸方は、うまくいきそうでなかなかうまくいかないことが多いです。

だってテナントからしてみれば借り物のビルに費用かけて改装するのって相当重い話だし、大抵の人は素人さんなので、工事してステキになる姿を想像できないからです。

もちろん店舗物件なら成り立ちます。もともと内装費用かける前提で探しているテナントが多いですから。

オフィステナントを想定した場合には、ありそうでない、川で砂金を探すような話になりがちです。

それで、まずオーナーさんのご希望を一通り聞いた後、次のような簡単な試算について聞いてもらいました。

このまま、一棟貸しと自分が投資をかけないことにこだわって募集を続けた場合、仮にこの先1年後に相場賃料(仮に月200万円)で成約したとします。
一方で、フロアごとに貸せるようオーナーが投資して(仮に5千万だとします)、ついでにカッコイイ内装に仕上げてすぐ貸せた(仮に月250万)とします。

テナントの平均入居期間が5年だとすると、この先5年で計算すると、今のままでは200万×4年分で9600万円。自分で投資した場合はイニシャル5千万かかりますが1.5億円の収入が入ります。ちなみにイニシャルの5千万を20年で償却したとすれば5年で1250万円経費計上できる分納税額もお得です。

これだけだと大して得ではないように思いますが、5年後にまたテナント募集をする時はどうでしょうか?今のままだとまた1年以上空室を抱える可能性が高いのに対して、投資しておけば6年目からの5年では大きな差が出ますよね。

これは、テナントを募集する時にの間口の広さが違うから起こる問題です。もちろん、1棟借りのいいテナントがすぐ見つかるかもしれません。あくまで粗い確率論の話です。どちらがいいか?というよりも機会損失と投資効率の話なので、オーナーさんの方針次第。きめの問題です。

ただ、不動産賃貸業はギャンブルではなくれっきとした事業なので、会社経営だと思って考えると、できるだけ事業を安定的に運営したいと思うのが経営者ではないでしょうか?

リスクを見極めてやるべきことを潰していき、きっちり結果を出していけるのはどっちか?という問題です。

このビルの場合、自分で投資した方が安定する理由は他にもあります。

先ほどはオーナーの視点で試算しましたが、テナントの視点で検証してみましょう。

テナントが自分で内装投資して入居する場合、仮に賃料が坪当たり1.5万円で工事費が坪20万かかったとします。5年で引っ越すとすると平均で月1.83万円/坪の物件に入居したのと同じです。イニシャル費用を調達することに比べたら、相場より2割高いカッコいいオフィスに最初から入った方が会社経営的には健全そうですよね。

それと、東京の事業所の78%は10人未満だという統計もあります。募集する際の間口の広さから考えると圧倒的に小規模事業所に焦点あてた方が確率が高まることがお分かりいただけると思います。

これらのお話を聞いていただいた結果、「埋まるかどうかわからないままジリジリ待つより可能性が高い方を選びたい」とおっしゃっていただきました。

 

(石田)

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