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【不動産会社こぼれ話】 オーナー様の心に届く提案とは? ―― 「損得」よりも大切な「感情」のメカニズム

こんにちは、テナワンの小林です。
今回は、日々の賃貸管理業務の中で私たちが直面する「提案の難しさ」について、先日社内で盛り上がった議論を交えてお話ししたいと思います。
不動産管理のプロとして、建物を守るために最善の提案をしているつもりでも、時としてオーナー様との間に見えない壁を感じることがあります。
■ 「正論」が「反発」を招いた苦い経験
あるスタッフが、こんなエピソードを打ち明けてくれました。
「鉄部のサビが広がる前に塗装しましょう」「空調が壊れてテナントからクレームが入る前に更新しましょう」と、将来の大きな出費を防ぐための提案をしたところ、オーナー様から「自分たちの利益(工事受注)優先で提案しているのではないか?」と不信に思われてしまったというのです。
管理会社の視点に立てば、予防保全は長期的にはオーナー様の利益(コスト削減)につながると信じています。
しかし、受け取る側のオーナー様にとっては、必ずしもそうではないという現実に直面しました。
■ 合理的な計算よりも「今の安心」
ここで興味深いのが、経済的な合理性とは逆の反応が喜ばれるケースもあることです。
例えば、古くなった物件にリニューアル費用をかけて賃料を高くして貸すより、「安い賃料でよければ、管理会社で一括借り上げ(サブリース)しましょうか?」という提案の方が意外に喜ばれることがあります。
投資リターンの計算上は、オーナー様自身で運用した方が収益は高いはずですが、「不確実な未来の利益」よりも「今すぐ、分かりやすく問題が解決される確実な安心」が選ばれることが多々あります。
「投資に見合う収入が入る前に、投資(工事)をする」ということに本能的な恐怖心や警戒心を抱いている方が多くいます。
長期的に考えれば必ずリターンがあることを説明しても、目の前の「大きな支出(痛み)」が将来見込める利益をかき消してしまうのです。
■ 属性によって異なる「判断の物差し」
また、オーナー様の属性によって「響く言葉」が全く異なることもあります。
- 法人オーナー様の場合、専門の担当者が「計算」で判断するため、トラブルを未然に防ぐ予防保全や、長期的な収支改善の提案がむしろ喜ばれます。
- 個人オーナー様の場合、「キャッシュフローの維持」や「感情」が優先されやすいです。一度に多額の費用をかける提案よりも、日々の賃料収入の範囲でできる小まめな補修を積み重ねる方が、心理的なハードルが低く、受け入れられやすいのです。
■ 相手のメンタリティに寄り添うということ
「ひどくなる前に直すのが親切」という私たちの常識は、万人に共通するものではありません。
「着地(終わり)を意識する」という視点も、オーナー様がその事案を心理的にどうクローズできるかを考えることにつながります。
「この提案は、オーナー様の今の不安を払拭できているか?」 「計算上の得を説く前に、相手の『痛み』に寄り添えているか?」
オーナー様に本当に満足していただけるサービスとは、単なる物件管理ではなく、こうした「メンタリティの理解」の上に成り立つものだと痛感しています。
この「感情と経営」の関係は非常に深遠なテーマですので、また別の機会にじっくり掘り下げてみたいと思います。