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まちづくりはビル再生から始まる_62 街の要素を読む その2 街の変化に気付け!
まちづくりはビル再生から始まる_62
街の要素を読む その2 街の変化に気付け!
当社に持ち込まれる案件の多くは70年代から90年代にたてられたビルで、中には60年代のビルもある。ビルが新築されてから街は変化し、新築当初の需要から必要とされる用途が変わってしまっていることも少なくない。重要なのはエリアの変化にあわせた募集活動をすることだ。街の変化に気付き、実態に合わせたテナントを誘致しなければならない。
特定産業が集積する街は産業構造の変化に弱い
当社で募集を預かった東神田のビル。1991年に新築されたこのビルは、新築したのが建設関係のオーナーだったこともあり建設関連のテナントで満室になっていた。しかし、数年前に投資用に購入した現オーナーが所有してからは、旧オーナーとの関係で入居していたテナントが次々に退去してしまった。オーナーによれば、数年前まで空室知らずだったが、リーマンショック前後から数フロア空いてしまい、埋め戻せなくなったとのこと。
近隣は馬喰横山の繊維問屋街など、歴史的に問屋街が形成されていたが、ユニクロに代表されるSPAが台頭して以来、衰退がつづいて、この数年人通りも少なくなった。近隣のオフィスは空室が目立ち、募集賃料低下の競争が激しく、周辺の築古ビルは投げ売り状態となっている。
衰退する産業もあれば成長する産業もある
業務エリアとしてのニーズが減少したとはいっても、都心のため複数路線が使えるなど利便性が高いことや以前に比べ賃料が下がったこともあり、新たな業態が進出しはじめた。とくに最近、秋葉原を中心にIT関連のベンチャー企業が育っており、秋葉原中心部では物件が不足してきている。また、IT企業は爆発的に成長する企業もあり、数名で始めた会社が2〜3年で一気に大面積に増床するケースも見られる。秋葉原にそうした企業が集中することで、周辺エリアにもその余波が出てきているのだ。
当ビルにもインターネット配信の動画サイトを製作する会社が入居し、たった1年で約70坪を140坪に増床するほど成長している。ちなみにこの会社は4年前に秋葉原で7坪から始めたという。4年で20倍の面積に増えたわけだ。
オフィス街から住宅街へ変化しつつある街
当ビル周辺のエリアでは2000年ごろから不動産ファンドなどが投資用のワンルームマンションを新築しはじめ、オフィスから住宅への建て替えが増えた。オフィス不況でビルを手放すオーナーが出てきたことと、都心でアクセスが良く、地価が下がったためにマンション価格が下がり、都心居住のニーズが強まったのだ。あまりに乱立したことから、ワンルームマンションの新築に行政が規制を強めたほどだ。現在では、ファミリータイプのマンションが多くできた上、以前は見られなかったスーパーやファミレスなどの生活利便施設も増えた。実際、この物件のエリアでは当ビルが新築された1991年当時から2012年までに2,000世帯増と人口が増加している。
そんな中、当社で募集開始した後、保育園の問合せが異常に多いことに気付いた。実は、2015年に100名の待機児童を見込んでいた千代田区では、各保育園の事業者が血眼になって場所を探していたが、オフィスビルのオーナーは事務所以外の用途を嫌う傾向にあり、場所探しは難航していたのだ。2方向避難などの条件を満たした当ビルは立地、建物構造的にうってつけであり、70名収容(約140坪)の認可保育園が入居した。
保育園は都の方針で10年以上の入居が条件になって安定のテナントとなった。
前述のIT企業の集積や保育園のニーズは、街の変化をもろに感じる業態だ。閑古鳥の鳴いていそうな街にも何かしらのニーズはあるものだ。何より保育園の子供たちが通うビルで、ITベンチャーが育っていないだろうか。
(山田)