ブログ / / 2,228
PV
次世代の働き方とオフィスを考える_16 ビルとシェアリングエコノミーの関係
中小ビル再生の専門会社であるテナワン株式会社(本社:港区赤坂)は、都心3区を中心に、10坪から40坪前後の中小オフィスビルの賃貸管理をしている。日々様々なクレーム、入居者同士のもめごとなどを解決する中で気が付いた、今後のビル経営に役立つ知恵、「シェアリングエコノミー」についてお話していきたい。
シェアリング・エコノミーとは
シェアリング・エコノミーという言葉をご存じだろうか。
シェアリング・エコノミーとは、欧米を中心に拡がりつつある新しい概念で、ソーシャルメディアの発達により可能になったモノ、お金、サービス等の交換・共有により成り立つ経済のしくみのことを指す。
数年前に問題になった、ビットコインなんかもこの概念のひとつだ。
不動産業界では、会議室やコンシェルジュをシェアする、シェアオフィスなどがそうだ。
このシェアリング・エコノミーの素敵な副産物は、「共有できないもの」を大切にする文化が育まれることだ。
紳士協定とは何か?
当社が月島で管理するワンフロア2室で給湯室が共有部にあるオフィス。
2テナントが給湯室を使うわけだが、キッチンにある吊り戸が問題だ。
その形状は半々に分けられない。
そこで、入居時に「紳士協定でお願いします」と言っている。
紳士協定とは即ち、テナントが自主的に判断してもらうということ。
ビル側で境界線を引けば、はみ出てるとか、○cm出た、などと争いのタネになってしまう。
国境はない方がお互いに気を遣うというわけだ。
このやり方を管理受託以来続けているが、なぜか争いが起きたことはなく、
管理者としても面倒な業務はない。
トイレの石鹸
先日、ワンフロアに複数の会社が入居するビルの共用トイレを借りた際、
二つの液体石鹸があることに気付いた。用量も中身もほぼ同じものだ。
両方共ボトルにテプラーが貼ってあり、「○○警備」「ご自由にお使いください」とある。
もう一方も「○○トラベル」「ご自由にどうぞ」と書いてある。
善意の応酬
そのトイレには、もともと石鹸がなかったようだ。
管理会社にクレームをつけ、「石鹸くらい置け。」ということは争いを生んでしまう。
そういうことを好まない人はいるし、数百円で済むのに争いは面倒だ。
ビル管理としてもそこまで予算がないのかもしれない。清掃会社に断られるケースもあるだろう。
ある日、誰かが自分用の石鹸を置く。しかし、勝手に置いて良いのか迷うし、
清掃員に捨てられてしまうかもしれない。そこで、名前を書く。
ただ、共用部に私物を置くなんて館内規約に反するかもしれない。
そこで「ご自由にお使いください」と書く。
これで、石鹸は市民権を得た。
ある日隣の入居者が石鹸の減りが早いことに気付く。
「隣の人が善意で置いた石鹸を私だけが使いすぎているのでは?」と思い、同じ石鹸を同じように置く。
これでバランスが取れた。
記名されていることで、空になったら持ち主不在のゴミにならず、届けてもらえる効果もある。
性善説でビル経営を
これらの事例は、敢えてルール化しないことによる入居者の自治を促す効果があることを教えてくれる。
クレームを先読みして隅々まで気を配るのも、高額な家賃に応えるサービスだろう。
しかし、入居者全員を満足させることは不可能だ。
できないことははっきり言う一方で、貸主、借主、管理者が少しずつ善意を出すことでビルが運営されるというやり方もある。
平和とは損得勘定だけではなく、お互いの善意でつくられるものなのだ。
(山田)