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まちづくりはビル再生から始まる_78 “居抜き”ってどうなの?
まちづくりはビル再生から始まる_78
“居抜き”ってどうなの?
オフィスビルで起きるシェアリングエコノミーの代表は「居抜き」だ。ここ数年、各オフィス仲介会社でも専門サイトを設けるなど徐々に一般的になってきた感がある。
店舗では内装譲渡は常識?
元々、店舗物件では内装譲渡は常識だった。バー・クラブはもとより、ラーメン屋、喫茶店に至るまで、内装に多額の費用がかかる店舗物件は、内装があるだけで開店までのスピードがとれるので価値がある。最近ではウェブ上のオープンな情報も出てきたようだが、内装譲渡に関する相場は基本的にクローズなマーケットだ。
中古自体がネガティブな文化
住宅、オフィスはまだまだ居抜きが少ない。日本人は新築主義が多く、手垢のついた中古住宅や古本、中古CDに至るまで、中古と名の付くものはネガティブなイメージが強いようだ。しかし海外に目を向ければ、100年前の椅子が残った家や、とりついた幽霊まで価値にしている物件もある。その物件の歴史が価値となっているのだ。
“ステージング”という売り方
近年、住宅市場において“ステージング”という売り方が出てきた。何もない部屋ではレイアウトが想像できないエンドユーザーに対し、ソファやテーブルなどをセッティングし、花や食器を並べて、生活が想像できる演出をするのだ。
新築のモデルルームでは行われてきたが、中古物件でも徐々に増えてきており、中古流通を促進する一助となっている。
しかし、オフィスではほとんど事例がなく、殺風景な内装を内見する状況はほとんど変化がない。ただワーキングスペースに居心地や居住性を求める動きが出てくる中で、内見時の演出はいずれポピュラーになっていく、というのが私の考えだ。
“居抜き”でみんなハッピーに
先月成約した芝公園の事務所(23坪)は、以前当社で内装を行った物件だ。若手の起業家が好む、天井を抜いたスケルトン風の内装は非常に人気が高い。
ある時、外資企業の日本撤退に伴い、会議室、デスク、チェア、ホワイトボードまで全て廃棄すると聞き、居抜き物件としてさっそく業者に声をかけた。外資のIT企業だけにセンス良くまとまった家具は、まるでドラマのワンシーンのようだ。
こうした物件を得意とするウェブ専門の仲介会社の担当に声をかけたところ、翌週には内見が入り、新規設立のベンチャー企業のオフィスとして即成約した。
このケースでは、退去するテナントの廃棄コスト、入居テナントのイニシャルコストダウン、空室期間を出さない貸主という全員の利益が一致したのだ。
“居抜き”その対策
募集の演出として効果的な居抜きだが、注意点もある。
当社では、覚書をつくることでリスク回避しているのだが、必要な要素は数点だ。
まず原状回復義務を引継ぐこと。残置物撤去を含め床壁天井の塗替え貼替は必須だ。(ただし、次も居抜きなら相談とする)次に残置物について、貸主、前入居者へはノークレームとすること。事前の内見で状態をよく見せておくことも重要だ。そして重要なのは写真の添付だ。工事写真のように残置物の状態や内装の傷、原状回復の内容などをいちいち写真にメモして貸主借主で交わすのだ。
居抜きでは、入居中の内見が多いので、退去テナント、新テナントが顔を合わせるのだが、面白いことに退去テナントも部屋をアピールしてくれる。我々よりもユーザーの口からのPRは効果絶大で成約が続いているので、しばらくやみつきになりそうだ。
(山田)
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