中小ビル100の物語 / / 2205
PV
#24
古い料亭を蘇らせたい!思いだけで走ったプロジェクト
赤坂にはかつてたくさんの料亭がありました。
ビル再生100の物語_24 古い料亭を蘇らせたい!思いだけで走ったプロジェクト
その建物も、かつては作家や政治家が夜な夜な集まった老舗料亭のひとつでした。
オーナーさんのお母さんが切り盛りし、自宅だったこともあって、使われなくなって長くたった今でもそのままの状態で残っていたのは経済合理性だけでは割り切れない気持ちからだったと思います。
銀行や不動産屋から、いろんな話が来たそうです。
「ワンルームマンションにしましょう。融資は任せてください」
「赤坂は駐車場が少ないのでぜひコインパークに。すぐにでも借り受けますよ」
古くからの知り合いでしたので、「どう思う?」と相談してもらったのがこの話のスタートでした。一応こちらもプロですので、それぞれの案を検証して「さらにこうすればもっとよくなる」という企画も提案しました。
でも、いつもはもの凄く判断が早いオーナーさんなのに、どうにも歯切れが悪い。
「やっぱり、今の建物を残したいんですか?」
「頭ではわかってるし、将来もずっと今のままというつもりもないけど、まだね。」
割り切って考えられない気持ちはよくわかりました。
「じゃあ、今の建物をそのまま使ってくれる人を探してみましょうよ」
言うは易しですが、これがなかなかにタフなお題でした。
まず、建築時期も不祥なほど古い木造建築なので、建物はとても傷んでいます。
長い間に地盤が沈下して、建物の一部が傾いてもいました。
検査済み証をとっていなかったので、住宅や飲食店にコンバージョンすることも難しい状況でした。(調べて分かったのですが、「料亭」といっても建物としては「旅館」として許可されていたのです)
元料亭の風格もあるので、飲食店として再生させたいという人が実にたくさん興味をもって見に来てくれましたが、そのほとんどの人が諦めて帰っていきました。
「建替えた方が安いぐらいお金がかかるよ」
「飲食店にできるんなら借りるんだけど」
実に40打席ノーヒット。こちらも内見案内疲れ。
さすがにもう諦めて他のことを提案しようか、と思っていたころに、
「元が「旅館」なんだったら、「旅館」用途で使ってくれる人を探せばいいんじゃないか?」
小旅館、ゲストハウス、うまく計画すればシェアハウスとしても活かせそうです。幸いなことに、外国人向けのゲストハウス事業を始めようとしていた人に興味を持ってもらえました。
もともとゲストハウスのメッカ・浅草で物件を探していたそうですが、
「六本木まで歩けて、純和風ゲストハウスが赤坂にできたらダントツに面白い!」
リノベーションに相当なコストがかかってもやりたい、と言ってもらえる人にようやくめぐり合いました。
決まった時のオーナーさんの嬉しそうな顔が忘れられません。
今、リノベーションの真っ只中です。
工事を始めてから発見された様々な不具合もありますが、どうにか進んでいます。
完成したらまたご紹介しますね。
(石田)