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#86

ビル経営に必要なタイムマシンモデル

オフィスビルの進化の方向はマズローの理論で説明できるって話を書きました。

この次世代オフィスを考えるときには、もうひとつ欠かせないことがあります。
それが「タイムマシンモデル」です。

よく「アメリカは日本の5年先を行っている」「アメリカで流行ったものを日本に持ってくればビジネスはうまくいく」と言われますよね。

こういう時代の先を行っているトレンドを場所やビジネスのカテゴリを変えて応用して採用するやり方を「タイムマシンモデル」といいます。

アメリカで少し前に流行ったものをタイムマシンのように時間を戻して日本に応用すれば、同じように成功するからです。

スターバックスなんかいい例です。かつてはテレビや冷蔵庫などの家電もアメリカが先でした。音楽もファッションもそうですよね。

ビルオーナーがビルの経営を考えるときに、このタイムマシンモデルがとても参考になります。

別にアメリカのオフィスを見学する必要はありません。

マズローの5段階欲求説に沿って住宅物件のトレンドに注目していれば、住宅に起こっていることが数年後にはオフィスにも起こるからです。

例えば、インターネットで物件探しをする流れは最初住宅で起こりました。今やビルでも当たり前です。

古い物件をリノベーションして生まれ変わらせた方が、むしろ新築そっくりな空間よりカッコいいとか、自分一人で住むよりシェアハウスの方がいろんな人と交流できて楽しいとか、これらも全部住宅で数年前から起こっている現象です。

では今住宅、「住む」というカテゴリで何が起こっているか?

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すでにリノベーションされた物件より、自分で好きなように改装して住んだ方が楽しいし暮らし方に合わせて棚を付け替えたり、間取りを変えたり、より快適に住むことができる。DIYで住む場所を作る人たちが増えています。DIYも仲間と一緒にやることでいろんな人と関わりができ、完成後も一緒に作り上げた仲間がしょっちゅう遊びに来てくれる。DIY自体をイベントにしちゃったりもしています。

これまでは自分の所有物件でないとこういう好き勝手な改装は難しかったのですが、賃貸住宅でも先進的な大家がDIYリノベを積極的に推奨するなど、貸し方にも大きな変化が起こっています。

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また、シェアハウスももはや特殊なものでなくなったばかりか、ハードとしてのカッコよさよりもどういう人が集まっているか、どんな趣味の人が入居しているかといった「コミュニティの質」の方が物件選びの時に優先されたりもしています。

さらにその先の減少として、共用リビングを地域の人たちとの交流の場所として開放したり、ヨガや英語が得意な住民同士が持ち回りでカルチャースクールの先生をやる場所にしたり、住む場所を公共空間化する流れも注目されています。

この住宅物件の流れをオフィスにどう取り入れて進化させていくか?

すでに5年先のオフィスの未来が見えているわけですから、タイムマシンに乗った気分で応用していけば失敗しないですよね。

ハードとしてのスペックを揃えることよりも、個性的な内装や居心地のいい照明にしたり、テナントの改装を原状回復を免除して認める貸方にしたり、シェアで入居することを積極的に認めたり、屋上やロビーを入居者以外も使える「公園」として開放したり、大きなお金をかけなくてもできることはたくさんあります。

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