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地域金融機関が未来への投資!築古ビルを「地域のコミュニティ拠点」へ
東京の御徒町・上野エリアに位置する築50年の古いビル。オーナーは地域金融機関で、将来的な自社ビル建て替えを見据え、隣地のビルを取得されました。しかし、建て替えの実施は当面先であるため、それまでの「暫定活用」についてご相談をいただきました。
オーナー側からは、既存ビルの解体や、簡易な建物を新築して賃貸する案なども含め、まずは可能性を検討したいということでしたが、我々は「壊して終わり」ではなく、地域の歴史とビルのポテンシャルを最大限に活かし、オーナーの想いを実現するコンセプトを提案したいと考えました。
そこで我々は、ビルの賃貸経営だけでなく、「地域に根付く金融機関」としての役割も盛り込める余地を設け、「オフィスビル兼交流拠点型施設」としての再生を企画。全費用を我々が負担する「借上げリノベサブリース:ツクモル保証」形式を提案し、見事コンペで採用されました。
この再生によって、旧耐震の古いビルは「小商いの人たちが集まるデザインオフィス」と「地域交流カフェ」を併設した、ミュニティ拠点を持つビルへと生まれ変わりました。

実際の進行
ご相談の内容
オーナーからのご依頼は、取得した古いビルについて「数社の事業提案コンペ」形式で暫定活用の検討をしたいのでコンペに参加してほしい、というものでした。
当初の会話の中で、オーナーは地域に根差す金融機関として、同機関の口座の有無にかかわらず、地域の小規模事業者やスタートアップの支援を手厚く行うなど、自社収益を超えた強い「使命感」を持っていることがわかりました。単なる遊休不動産の活用案ではなく、地域の活性化や小規模企業支援といった、「オーナースタンスとのシナジーを提案内容に盛り込みたい」、「強いメッセージ性を持ったコンセプトでなければこのコンペは勝てない」、と考えました。
他の提案が「解体して駐車場にする案」や「大規模にリノベして賃貸管理を受託する案」といった比較的オーソドックスなものだったと後で伺いましたが、我々はまず現地周辺がどういう場所なのか、その歴史も含めてくまなく調べて理解することから始めました。
ビル自体は古いものの、最寄りの駅からわずか徒歩1分、大通り沿いの角地で視認性は抜群という最高の立地でした。この立地は、古いビルのデメリットを覆せるほどのポテンシャルを秘めていると確信しました。

一方、このエリアは一般的な「オフィス街」とは異なり、周辺のリサーチでは坪単価1万円前後の賃料で募集している物件も多く、ただリノベするだけでは収益的に厳しい、という課題も見えてきました。このビルを収益化するためには、「その他大勢と競争しない」ための強烈なコンセプトメイキングが必要不可欠でした。
我々からのご提案
我々は、この立地特性とオーナーである地域金融機関の役割を深く結びつけるコンセプトを提案しました。
特に御徒町周辺は、江戸時代から小商いの商人たちが多く住んだ歴史があり、現在もその名残から小規模事業者が多く活躍している地域です。このような地域の経済活動を支える役割を持つ地域金融機関との相性は、非常に良いと考えました。

そこで我々は、「地域経済を支える小規模事業者のための交流拠点」というコンセプトを打ち出しました。これはオーナーの「地域貢献したい」という企業姿勢と強く連動しています。
ご提案したスキームは、早野ビルの事例と同様に、我々が現状の古いままの状態でビルを一括で借上げ、すべてのリノベーション費用とリスクを自社で負担して転貸するというもの(ツクモル保証)です。
コンセプトを具体化するため、以下の3つの要素を軸に計画を進めました。
・小規模事業者が入りやすいデザインオフィス(上階)
・地元の人たちとの交流接点となるカフェを併設(1階)
・地域金融機関が起業家や地域を支援できる交流の場を創出
この「交流拠点型施設」としての再生提案は、単なる収益化を超えた地域金融機関の未来への投資、地域の未来への貢献という明確なメッセージを伴っていたため、高く評価いただけたようです。結果、転貸を前提とした定期借家契約(期間10年)という長期契約を締結することができました。借上げ賃料は周辺相場の1/4程度、我々の費用回収期間は5年程度です。

さらにオーナーは、引き渡し前に自己負担で耐震補強工事を実施してくださり、安全性の面でも建物をアップデートしてくださいました。
リノベーション後の状況
契約後、いざリノベーション工事に着手すると、築古ビルならではの予期せぬ問題が連続で発覚しました。
最も大きな課題は、ビル全体の電気容量の不足です。現代のオフィス・カフェとしての利用に必要な電力を賄うことができない状態でした。我々は電力会社と綿密な交渉を重ね、供給規定のギリギリまで供給量を増やしてもらい、さらにビル内の各フロアの電気容量を細かく計算して分散させることで、この難題を解決しました。
また、給排水管の老朽化も深刻でした。そこで、古い配管を直すのではなく、全く新しいルートで給排水管を敷設し直すという大胆な決断をしました。これに合わせて屋上の高架水槽を使わない給水ルートに変更することで、メンテナンス費用も削減できるという副次的な効果も得られました。
これらの困難を乗り越え、リノベーション工事が無事に完了し、いよいよテナント募集の段階に入りました。上階のオフィス区画は想定よりも早く満室となりましたが、当初テナント誘致を考えていた1階のカフェスペースをどうするかについては、最後まで悩みました。このプロジェクトの核は「地域交流拠点」を生み出すこと。カフェテナントの誘致に時間をかけ、コンセプトが薄まるリスクを負うよりも、コンセプトの実現を優先し、我々自身で運営すべきではないか、と決断しました。
最終的に、このビルの共同運営先が「SHELVES COFFEE」というカフェを1階で運営し、交流を生む場を創出することになりました。

また、御徒町の「徒」と「勝ち」から、ビル名を「徒ビル」に改称。小規模オフィスとカフェの複合施設として生まれ変わり、特に1階の自主運営カフェは、狙い通り地域住民やテナント同士の交流の場として機能しています。近くにある東京藝術大学の学生さんたちが「壁に絵を描きたい」と言ってくれたり、海外に物を輸出する事業の勉強会には興味を持つ事業者はもちろん、地域金融機関としてオーナーのご担当にも参加してもらいました。これらをを通じて交流が生まれ、コンセプトでもある地域の拠点として機能してくれています。
後日談
テナント募集の際のちょっとしたエピソードとしては、当初リサーチに基づき、周辺競合物件の1.3倍程度の賃料としたのですが、募集開始直後から問い合わせが相次ぎました。「ちょっと安く値付けしすぎたかも」とこの物件のポテンシャルを改めて見直していた頃、1階のカフェに来店してくれた近所の会社の代表が上階のオフィス空間も気に入っていただき、結果複数フロアをまとめ借りしていただき、満室となりました。当初コンセプトの地域の小規模事業者、ではなかったのですが、小売り事業も始められるとのことなので、周辺との接点やシナジーは模索できそうです。

オーナーである地域金融機関にとっては、賃料収入の確保だけでなく、地域の活性化と起業家支援という本来の役割を果たす場所となり、「暫定活用」の枠を超えた、地域の未来を形作る「戦略的な取組実績」になった事例となりました。
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